「ぐうの音も出ない」という言葉、聞いたことはあるけれど、意味や語源をしっかり説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
この表現は、相手の意見や事実が正しすぎて反論できないときや、感動で言葉を失うときなどに使われます。
この記事では、そんな「ぐうの音も出ない」という慣用句の正しい意味・由来・使い方を、わかりやすい例文とともに徹底解説します。
また、日光東照宮説や擬声語説といった語源の背景、類義語・英語表現、さらにビジネスシーンでの使い方まで詳しく紹介。
これを読めば、あなたも「ぐうの音も出ない」を自然に使いこなせるようになります。
ぐうの音も出ないとは?意味と使い方をやさしく解説

「ぐうの音も出ない」という言葉は、日常会話でもよく耳にする表現ですよね。
この章では、その正しい意味や使い方、どんな場面で使えるのかを分かりやすく解説します。
ぐうの音も出ないの基本的な意味
「ぐうの音も出ない」とは、反論できないほど圧倒されることを意味します。
つまり、相手の意見や事実が正しすぎて、何も言い返せない状態を表す慣用句です。
たとえば、上司にミスを的確に指摘され、言い訳すらできないような瞬間がまさにそれです。
この「ぐう」は、反論しようとしても声にならないうめき声を指すとされ、そこから「ぐうの音すら出ない」という比喩的表現になりました。
つまり、「完全に論破された」「何も言えないほど正論だ」というニュアンスを持つ言葉です。
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| ぐうの音も出ない | 反論できないほど正しい意見や事実に圧倒される |
| 言葉を失う | 驚きや感動で何も言えなくなる |
| 黙り込む | 気まずさや反省で口を閉ざす |
「ぐうの音も出ない」はどんな場面で使う?
この言葉は、日常生活・ビジネスの両方で使えます。
たとえば、ディベートで相手の論理が完璧すぎて何も反論できないときや、上司の鋭い指摘を受けたときなどに使います。
また、感動や驚きの意味で「ぐうの音も出ないほど美しい景色だった」というように使うこともあります。
反論不能な状況にも感動で言葉を失う状況にも使える、柔軟な日本語表現なのです。
状況に応じて意味が変化するのが、この表現の面白いところです。
| シーン | 使い方例 |
|---|---|
| ビジネス | 上司の論理的な説明に、部下はぐうの音も出なかった。 |
| 感動 | 展覧会の絵に圧倒され、私はぐうの音も出なかった。 |
| 日常 | 彼の完璧な回答に、みんなぐうの音も出ない。 |
ぐうの音も出ないの語源とは?
ここからは、「ぐうの音も出ない」という言葉の由来や、どうしてそんな言い方になったのかを深掘りしていきます。
実はこの慣用句には、いくつかの興味深い説があるんです。
日光東照宮説:徳川家康との関係
ひとつ目の説は、「ぐう」が「宮(ぐう)」を指すというものです。
つまり、徳川家康を祀る日光東照宮の偉大さに圧倒されて、言葉が出なかったという解釈です。
江戸時代以降、家康の威光や統治力を称える言葉として生まれたという見方もあります。
この説では、家康の偉業を前にして「ぐうの音も出ないほどすごい」となり、今の形に近づいたとされています。
| 説名 | 由来 |
|---|---|
| 日光東照宮説 | 「ぐう」は「宮(ぐう)」を意味し、家康の偉業に圧倒されることから |
| 擬声語説 | 「ぐう」といううめき声から、息が詰まる様子を表現した |
息が詰まったときの擬声語説:心理的な側面からの解釈
もうひとつの説は、「ぐう」という擬声語が語源というものです。
反論しようとしても喉が詰まり、「ぐう……」としか声が出ない様子から、この表現が生まれたとされています。
この説は現代の感覚にも合っており、心理的に圧倒されて声が出ないという状態をうまく言い表しています。
まさに「精神的に押し負けた状態」を象徴する日本語表現です。
文学作品に登場した「ぐうの音も出ない」の歴史
この言葉は明治時代の文学作品にも登場しています。
夏目漱石の『三四郎』や、尾崎紅葉の『多情多恨』にも使用例が見られるんです。
当時から「言葉を失うほどの衝撃」という意味で使われており、すでに一般的な表現だったと考えられます。
つまり、「ぐうの音も出ない」は古くから人の感情や心理を的確に描写する言葉だったのです。
| 登場作品 | 著者 | 使用例 |
|---|---|---|
| 三四郎 | 夏目漱石 | 「三四郎はぐうの音も出なかった」 |
| 多情多恨 | 尾崎紅葉 | 「びしびし言捲られて、ぐうの音も出なかった」 |
| 明治俳諧史話 | 勝峯晋風 | 「これは剽窃と言はれても、ぐうの音も出ない筈だ」 |
ぐうの音も出ないの類義語・言い換え表現

「ぐうの音も出ない」と似た意味を持つ日本語表現はいくつもあります。
この章では、それぞれの違いや使い分けも含めて整理してみましょう。
似た意味を持つ日本語表現
「ぐうの音も出ない」と同じように、反論できない・言葉を失うという状態を表す表現には以下のようなものがあります。
| 類義語 | 意味 | 使用例 |
|---|---|---|
| 言葉を失う | 驚きや感動で言葉が出なくなる | あまりの美しさに言葉を失った。 |
| 何も言えない | 反論や意見が出ない状態 | 彼の正論に何も言えなかった。 |
| 黙り込む | 話をやめて沈黙する | 厳しい指摘に黙り込んだ。 |
| 無言の了解 | 言葉にせず理解・同意する | 二人は無言の了解を交わした。 |
| 無言の抗議 | 沈黙によって不満を表す | 社員たちは無言の抗議を示した。 |
これらは似ているようで、「ぐうの音も出ない」だけが“圧倒されて反論できない”という強いニュアンスを持ちます。
つまり、他の表現よりも「完敗」や「論破」の印象が強いんです。
反対に、「言葉を失う」は感動や驚きなどポジティブな意味でも使えます。
使い分けのポイントは、「相手に圧倒されたのか」「感情に圧倒されたのか」です。
英語で言うと?海外の類似表現も紹介
英語でも似たような表現があります。
「I’m speechless.(言葉が出ない)」がもっとも近い表現です。
また、「I have no words.」「I can’t say anything.」も同様の意味を持ちます。
ただし、これらは感動や驚きによる沈黙を表す場合が多く、論破されて何も言えないというニュアンスは弱いです。
そのため、「I’m completely defeated.(完全にやられた)」などと組み合わせると、「ぐうの音も出ない」に近い表現になります。
| 英語表現 | 意味 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| I’m speechless. | 言葉を失うほど驚く | ぐうの音も出ないほど驚いた。 |
| I can’t say anything. | 何も言えない状態 | 反論できない。 |
| I’m completely defeated. | 完敗した | ぐうの音も出ないほどやられた。 |
ぐうの音も出ないを使った例文集
ここでは、「ぐうの音も出ない」という表現をさまざまなシーンでどう使えるのか、具体的な例文で見ていきましょう。
日常会話、ビジネス、感動の場面ごとに紹介します。
日常会話での例文
カジュアルな場面では、少し驚いたり、完璧な答えを聞いて言葉を失うときに使えます。
- 彼の冗談が的を射すぎて、私はぐうの音も出なかった。
- 母の正論にぐうの音も出ない。
- テストで友達に圧倒され、ぐうの音も出なかった。
日常では“ちょっと負けた”という軽いニュアンスでも使えるのが特徴です。
| 状況 | 例文 |
|---|---|
| 家族の会話 | 母の的確な意見に、ぐうの音も出なかった。 |
| 友人関係 | 友達のツッコミにぐうの音も出ないほど笑った。 |
| 学校・勉強 | 先生の指摘が完璧すぎて、ぐうの音も出なかった。 |
ビジネスシーンでの例文
ビジネスでは、相手の提案や資料、発言があまりに優れていて、反論できない場面で使われます。
- 上司のプレゼンが完璧で、部下たちはぐうの音も出なかった。
- 競合他社の戦略を見て、我々はぐうの音も出ないほど驚かされた。
- クライアントの指摘が的確で、チーム全員がぐうの音も出なかった。
目上の人に使う場合は、やや謙譲のニュアンスを含む表現として用いると自然です。
| 場面 | 例文 |
|---|---|
| 会議 | 彼の提案が完璧で、参加者全員ぐうの音も出なかった。 |
| 営業 | クライアントの要望に完璧に答えられず、ぐうの音も出ない思いだった。 |
| 社内評価 | 上司の分析が正確で、部下たちはぐうの音も出なかった。 |
感動・驚きを表す例文
この言葉は、感動や美しさに言葉を失う場面でも使われます。
否定的な意味だけでなく、ポジティブな沈黙としても成立するのです。
- 美術展の作品が素晴らしく、ぐうの音も出ないほど感動した。
- サプライズプレゼントにぐうの音も出なかった。
- 恩師の言葉にぐうの音も出ないほど胸を打たれた。
| 感情 | 例文 |
|---|---|
| 感動 | 演奏があまりに素晴らしく、ぐうの音も出なかった。 |
| 驚き | 想像を超える結果に、ぐうの音も出なかった。 |
| 感謝 | 上司の励ましの言葉に、ぐうの音も出ないほど感謝した。 |
「ぐうの音も出ない」はネガティブだけでなく、ポジティブにも使える万能表現です。
ぐうの音も出ない時の返し方・リアクション

相手に圧倒されて「ぐうの音も出ない」状態になったとき、どう返すのがスマートなのでしょうか。
この章では、ビジネス・日常それぞれの場面で使える返し方を紹介します。
謙遜・感謝を伝える返し
相手の正論や説得力のある発言に圧倒されたときは、素直に感謝や敬意を示すのが最も自然です。
無理に反論しようとすると印象が悪くなるため、潔く認めることが大切です。
- 「おっしゃる通りです。気づきをいただきました。」
- 「確かにその通りですね。ぐうの音も出ません。」
- 「言われてみれば、その視点はなかったです。」
謙遜の姿勢を見せることで、相手との信頼関係も深まります。
| 返し方のタイプ | 具体例 |
|---|---|
| 謙遜 | 「ぐうの音も出ません。本当にその通りです。」 |
| 感謝 | 「ご指摘ありがとうございます。勉強になりました。」 |
| 共感 | 「そうですね。私も同じことを感じていました。」 |
ユーモアを交えた返し方
場の空気を和ませたい場合は、少しユーモアを含んだ返し方も効果的です。
ただし、相手が真剣な場面では避けるのがマナーです。
- 「いやあ、ぐうの音も出ないくらい完敗ですね。」
- 「その理論、完璧すぎてぐうの音が出る隙がありません。」
- 「今日はもう反論の在庫がありません。」
軽いジョークを交えることで、場が柔らかくなり、関係性を良好に保てます。
ユーモア+誠意のバランスが大切です。
| 場面 | 返し例 |
|---|---|
| 会議後 | 「今日は完璧にやられましたね。ぐうの音も出ません。」 |
| 雑談 | 「それは見事ですね、完全に論破されました。」 |
| 上司との対話 | 「納得です。ぐうの音も出ないほど明快でした。」 |
まとめ:ぐうの音も出ないを正しく使って表現力を磨こう
ここまで、「ぐうの音も出ない」という慣用句の意味・語源・使い方を詳しく見てきました。
最後に、この記事の内容を簡単に振り返りましょう。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 意味 | 反論できないほど正しい、または圧倒されて言葉が出ない状態 |
| 語源 | 日光東照宮説と擬声語説の2つの説が存在 |
| 使い方 | 驚き・感動・論破など幅広い場面で使用可能 |
| 類義語 | 言葉を失う、黙り込む、何も言えない など |
| 英語表現 | I’m speechless. / I’m completely defeated. |
「ぐうの音も出ない」は、相手を称えることも、自分を謙遜することもできる便利な表現です。
使い方を知ることで、会話の印象がぐっと洗練されます。
また、ビジネスや日常のコミュニケーションでこの表現を上手に使えば、言葉選びのセンスが一段と光ります。
“言葉で負けても、伝え方で勝つ”。それが大人の表現力です。

